よし、自分の健康をケアしていこう!
と思ったとき、最初にとっつきやすいのが「健診」ではないでしょうか。
「健診」とひとことで語られることが多いのですが、実は色々種類があります。
「予防は病気を防ぐだけじゃない」の記事に書いたとおり、健診は通常二次予防に分類されるものです。
健診は、早期発見・早期治療を目的として行われます。
自分で感じる症状(自覚症状)のない段階で定期的に受けることで、からだの変化や異常を早いうちに見つけることが出来る、というものです。
でも健診、検診、人間ドックなど、似たようなものがたくさんあり、どれを受けるべきか迷ってしまいませんか?
今回は健康診断やそれに似たものについて解説していきます。
関連記事>>>「予防は病気を防ぐだけじゃない」
目次
健診とは
健診(けんしん)とは、健康診断の略です。
何か病気や病気につながる異常があるかどうかをざっと調べるものです。
健診には実はかなりたくさん種類があります。
ひとつの分け方が、法定か法定でないか、です。
法定健診とは健診の根拠となる法令があって、該当するものは実施したり受診したりする法律上の義務や定めがあるもののこと。
法定健診のうち、代表的なもののひとつが学校保健安全法(学校保健法)による児童生徒の毎年の健診です。
学校でクラスメイトと列に並んで身長測定などをした記憶がありますよね。
そして、もうひとつ重要な法定健診が、働く人が受ける労働安全衛生法(安衛法)に定められた健診です。
安衛法による健診はさらに大きく2種類に分けることが出来ます。
一般健診と特殊健診です。
ほとんどの人が健診と聞いて思い浮かべるのは、一般健診でしょう。
特殊健診は、有機溶剤や特定化学物質など人体に有害な物質を仕事で扱う人が受ける健診です。
特殊健診についてはもしかしたらそのうち記事にする・・・かもしれません。
一般健診にもいくつか種類がありますが、会社に入社する際に受ける雇入れ時健診、毎年受ける定期健診は会社で雇われて働く人であれば誰しも受けているはずです。
会社側には実施義務があり、労働者側には受診義務があるのが安衛法による健診の特徴の一つです。
これ以外の一般健診についてはまた別の機会に。
一般定期健康診断
働く人が最もよく受ける健診です。年1回以上実施されます。
労働者の安全と健康の確保が目的です。
健診バスや会社近くのクリニック、健診機関などで受診している人が多いのではないでしょうか。
一般定期健診の実施主体は会社であり、かかる費用を会社で負担することが安衛法で定められています。
働く人の側からみれば、タダで調べてくれる、とてもお得な機会です。
一般健診は、その時の体の状態をおおまかに調べるものです。
項目(何を調べるか)は安衛法で定められています。
一般定期健診で何らかの異常が見つかった場合、ほとんどは「何がどのように異常なのか」「なぜ異常が出ているのか」まではわかりません。
より詳しく調べて異常の正体を明らかにしていく必要があります。
これを精密検査(せいみつけんさ)といいます。
精密検査は健診の範囲外とされているため、精密検査にかかる費用は本人が負担します。
健診で見つかった異常は放置せず、早めに精密検査を受けましょう。
治療の必要のない異常であることもあれば、命拾いをするような場合も考えられます。
これが、二次予防としての健診の上手な活用方法です。
一般定期健診は労働者の安全と健康の確保のために行われるものですので、この結果によっては働き方などを変えないといけないこともあります。
法律上、会社は健診結果を確認して結果に応じた働き方をさせる必要があります。
実際は会社の依頼を受けた産業医などの医師が結果を確認して、働ける健康状態かどうかの判断をしています。
これを就業判定といいます。働く人を守るための産業医の重要な職務の一つです。
そして、実は一般定期健診には一次予防としての活用方法もあります。
毎年定期的に受診するため、自分の変化をとらえやすいというメリットをうまく使うのです。
たとえば
体重が少しずつ増えているという気づきから、適度に運動するとか、暴飲暴食を控えるなどといった生活習慣の改善につながることがあります。
これは立派な一次予防であり、誰に言われるでもなくこうした行動を起こせる人は、非常にヘルスリテラシーの高い人だと言えるでしょう。
- 雇われて働く人は年1回以上健康診断を受ける義務がある
- 健診費用の自己負担はなし!
- 健診結果を確認して、必要があれば精密検査を受ける
- 健診結果は産業医等が確認して働ける状態かどうか判断している
- 上級者は健診結果を見て生活習慣を整えている
特定健康診査(メタボ健診)
特定健診と略されます。いわゆるメタボ健診のことです。
法定健診の一種で、高齢者医療確保法によって定められています。
高齢化や生活習慣病による医療費増大を受けて2008年から全国で開始されました。
対象となるのは40~74歳で、健診の実施主体は保険者(健康保険組合など)です。
受診の義務はありませんが、公的医療保険に加入さえしていれば、上記の年齢層の誰もが受診することができます。
これも受診者の費用負担はありませんので、お得な健診と言えます。
会社で働く人の場合は、会社と健保が協力して一般定期健診と特定健康診査を同時に実施していることもあります。
特定健康診査の特徴は、結果に応じて特定保健指導という事後措置を受けられることにあります。
健保や自治体の保健師が生活習慣病(メタボリックシンドローム)改善のための指導を行います。
もちろん、すでに医療機関での治療が必要なレベルまで悪化していれば速やかに受診して治療を受けることが必要です。
検診とは
健診とは、おおまかに異常や病気の原因がありそうかどうかを調べるものでした。
対して検診とは、特定の病気を念頭に置いて、その病気があるかないかを知るために診察や検査を行うことをいいます。
調べようとしている病気や臓器以外については通常わかりません。
検診は大きく対策型検診と任意型検診に分けることが出来ます。
対策型検診としては、自治体で住民に対して行われている各種がん検診が有名です。
ここでは対策型検診としてのがん検診について解説します。
健診のように法で実施や受診が定められているわけではありませんが、有効性が確立されている一部の検診については自己負担なしや格安で自治体などが実施しています。
日本人の死因の第一位は悪性新生物。
つまり「がん」です。
男女別にみても、それぞれ死因のトップはがん。これを予防することには大きな意義があります。
まだがんを完全に予防する手段は見つかっていません。
がん検診を定期的に受診することで早期発見し、がんがごく軽いうちに治療してしまうのが重要です。
日本のがん検診受診率は世界的に見ても低いことが問題視されています。
がん検診についてはもっと多くの人に受診してもらいたいと考えています。
有効性が確立されているがん検診を以下にまとめています。
- 胃がん検診
- 大腸がん検診
- 肺がん検診
- 乳がん検診
- 子宮頸がん検診
特に、女性特有のがんである子宮頸がん検診は20歳以上になったらすべての女性に少なくとも2年に1回は受診してもらいたい検診です。
がんは決して高齢者だけの病気ではありません。
どのがんも、早期の段階で自覚症状はほとんどないため、できるだけ軽いうちに見つけるためには定期的な検診が何より大切です。
何にもないと思っている時にこそ検診を受ける価値があります。
残念ながら自覚症状が出てからでは進行がんの可能性が高くなってきます。
その場合は検診ではなく、病院を受診して治療を受けましょう。
20歳以上40歳未満の女性なら・・・
子宮頸がん検診を少なくとも2年に1回受けましょう。
検診の種類を選ぶときに、医師による検査か自己採取かの選択肢がある場合もありますが、原則医師による検査を受けることをお勧めします。
40歳以上の女性なら・・・
20歳以上が受ける子宮頸がん検診に加えて、乳がん検診(マンモグラフィ)を2年に1回受けましょう。
乳がんの早期発見のためには、健診だけでなく毎日のセルフチェックも重要です。
乳房にしこりやひきつれがないかどうか、入浴の時などに触って確かめる習慣をつけると良いですね。
ここまでは女性特有のがんの検診です。
さらに、男性と同じように大腸がん、肺がん、胃がんの検診を受けることも忘れずに。
詳細は続きをご覧ください。
40歳以上のすべての人に受けてほしい検診
大腸がん検診と肺がん検診を毎年受けましょう。
大腸がん検診には便潜血検査が非常に有効です。
とても簡単でからだへの負担もないので、毎年確実に受けたいものです。
肺がん検診は通常は胸のレントゲン写真でのチェックです。
喫煙者など特定の条件に合う人の場合は、レントゲンに加えて喀痰細胞診という痰の検査を行うこともあります。
50歳以上のすべての人に受けてほしい検診
これまで当てはまったすべての検診に加えて、胃がん検診を2年に1回受けましょう。
胃透視(バリウム検査、胃エックス線検査、胃レントゲン検査などともいいます)または胃カメラ(内視鏡検査)のどちらかを受けます。
胃がん検診についてはこれまでは40歳以上の男女にバリウム検査を毎年することになっていました。
最近では胃カメラも検診方法として採用されたり、年齢が50歳以上に引き上げられるなどの少し変わってきています。
現時点では、バリウム検査を40歳以上の人が毎年受けるという選択肢も残っているようです。
地域住民の集団健診で胃カメラ検査を行うことは難しい場合もあるため、自治体などによっては最初から選択肢にないことも考えられます。
その場合は仕方がありませんが、もしどちらでも選択できるのであれば、個人的には胃カメラ検査がお勧めです。
バリウム検査にも胃カメラ検査にも得意不得意がありますが、バリウム検査で異常があったときには精密検査としてどっちにしろ胃カメラ検査を受けることになるからです。
- 女性は20歳以上になったらがん検診!女性特有のがん検診をしっかり受ける
- 40歳以上の大腸がん、肺がん、50歳以上の胃がん検診は男女ともに受けること
人間ドックとは
任意型検診の一種です。
法的根拠や強制力があるわけでも自治体などの支援があるわけでもなく、サービスとして医療機関や健診機関などが提供しています。
あくまで個人が自身の健康状態について把握するために受診するため、全額自己負担です。
保健指導などの事後措置も、定められたものはありません。
会社の経営者や役員、自営業、専業主婦(主夫)で40歳未満の方は、健診を受ける機会がほぼありません。
そのため、自主的な健康管理が必要です。
健康を害すことが収入や生活へのダメージに直結するため、特に健康管理の重要性が高い人だといえます。
法定健診とちがって、自分が受けたい項目をある程度自由に選択することが可能です。
安衛法の一般定期健診のような項目を全部受けた上で、がん検診も追加するなど、自由度が高いことがメリットといえるでしょう。
多く場合ある程度の検査がセットになったメニューがあって、そこにオプションをつけたりいらない検査を削除したりする仕様になっているようです。
法定健診の内容は最初からセットになっていることが多いと思います。
最近では、医療機関などが一流ホテルと提携して、ゴージャスな宿泊や美味しい料理などと一緒に人間ドックを提供していることもあるようですね。
もちろん、法定健診を受けている人でも、健診ではカバーできないがん検診などの受診のために人間ドックを受診することもできます。
たとえば大腸がん検診について便潜血検査ではなくて大腸カメラ(内視鏡検査)を受けたり、肺がん検診について胸のレントゲン写真ではなくてCTをとったり、といったカスタマイズが可能です。
- 自営業、専業シュフなどは特に人間ドックを活用した自主的な健康管理が重要
- 人間ドックはカスタマイズの自由度が高い
まとめ
健診、検診、人間ドックの違いについての解説でした。
健康診断と健康診査、健診と検診など、とかく医療や法律関連の用語はややこしいですよね。
でも、違いを知って正しく選択することで、予防の質は高まっていきます。
賢く使い分けていきましょう。
- 健診は何か異常があるかどうかおおまかに調べるもの
- 検診はターゲットである特定の病気について調べるもの
- 人間ドックは健診と検診の中身を自由に組み合わせ可能