産業医のPOPです。
なぜ私がブログをはじめることにしたのか。
先に言ってしまうと、がん予防の基本というかごく一般的と私が思っていたことを、実は知らない人がとても多いのではないか、と考えたためです。
ホリエモンが胃がんの原因は感染症だと知らなかった衝撃
私は本が好きなのでちょくちょく本屋に足を運びます。
ベストセラーや新刊の棚にはホリエモンこと堀江貴文氏の書籍がたくさん並んでいますよね。
これまであまり堀江氏の活動に注目したことはなかったのですが、ある本が目に飛び込んできました。
その名も『健康の結論』。著者は堀江貴文氏。監修は『予防医療普及協会』。
私は予防を武器として企業で働く人の健康を守る産業医ですが、『予防医療普及協会』を知りませんでした。
また、堀江氏が健康について語っていること自体に興味をひかれ、すぐさま購入しました。
軽快な文体で読みやすく、1時間ほどで読み終わりました。
読み終わった私の胸には鈍くて重い衝撃が広がっていました。
苦い敗北のようなモヤモヤする気持ち。
静かな驚きをかみしめながら、私たち産業医など予防に関わる医師の活動が不十分であるという現実を実感したのです。
この本を読んではじめて知りましたが、堀江氏は人間ドックを定期的に受けるなど、意外なほど健康管理をきちんとしている方でした(失礼)。
もっと奔放で、言ってしまえば自堕落な生活をしていそうなイメージしかなかったので、こういうと偉そうですが素直に見直したのです。
そんな堀江氏が「胃がんの原因のほとんどはピロリ菌による感染症だ」ということを知らなかったということが書かれていました。
ここに衝撃を受けたのです。
健康への関心が高く、実際に予防につながる行動もとっている。
お金もあり時間の自由度が高く、情報収集力も知的能力も高い。
なのに、私たち予防に関わる医師はもちろん医学生でも知っているレベル(と思っていた)予防の知識を最近まで知らなかったなんて!
ショックでした。
堀江氏自身はご本人がよくわかっていないままに人間ドックを受け、ピロリ菌は感染していなかったため特に知らなくても問題はありませんでした。
が、ここからの彼の行動力はさすがです。
詳しくは書籍を読んでいただければと思いますが、予防医療普及協会なるものの設立に関しての記述もあります。
「病気の予防」だけでなくて「防げる死を防ぐ」ための色々、例えばAEDを使った初期の救命活動の重要性や、長寿時代の働き方などについても言及しているのです。
すべてに同意!とまでは言いませんが、我々産業医が日ごろから考えたり実践したりしている内容とかぶる部分が多い。
第1章で取材されている産業医の大室先生は私の知っている人だし、当たり前かもしれませんが。
堀江氏の個人的意見の部分にはやや過激なことも書いてあったりはするものの、全体としては非常にまっとうで役に立つ本だと思います。
お勧めされている病気の予防法はエビデンスのあるものばかりで、データは信頼のできるところからの出典です。
私にとってはどれも目新しい内容ではありませんでしたが、これが本になって売れている(類似の堀江氏著の健康本が複数あるので売れていると推察)。
ということは、堀江氏同様に私たちが当たり前と思っていることを知らない人がたくさんいるんだろうと改めて感じたわけです。
もっと広く知られるための活動をしていかなければ、と反省しました。
私が産業医になった理由のひとつが、予防によって将来の病気で苦しむ人を減らしたいという思い。
病院にやってくる患者さんを治療するのではなく、現時点で健康な人たちにアプローチすることで「防げたはずの病」によって多くの人が苦しむ現状を変えられるのではないか、と考えたのです。
実際、自分が産業医として関わる企業やその企業で働く全員が避けられる不幸を避け、できるだけ皆で幸せであるためにはどうしたらいいか、と全力で活動しています。
ただ、産業医先以外の企業の社員や、産業医を置かない規模の会社、個人事業主や専業シュフなどにはアプローチできていませんでした。
そもそも「産業医」という立場ではできないこともたくさんあります。
産業医として契約している企業以外の人にも、働いていなくても、できるだけ多くの人に予防や健康に関する知識を届けたい。
これが私がブログを始めた理由です。
厚生労働省など公的機関も色々情報発信をがんばってはいますが、縦割り行政の弊害か、働き方や健康に関する情報をワンストップで提供するには至っていないと思っています。
実は全部厚労省HPにつながっているんですが、慣れていないと目的の記事が見つけにくいうえにちょっとわかりにくいんじゃないかなぁと思ったりしているわけです。
なので、このブログではあくまでいち産業医の見解や考察を含めつつ、正しい情報をベースとした役に立つわかりやすい記事をつくるように心がけます。
手当たり次第記事を作成しているところではありますが、がん予防に関する記事も近いうちに更新しますのでお楽しみに。
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