できることならがんになりたくない。
がんを予防したい。
こう考えている人は多いと思います。
では、がんを予防するためにあなたは何をしていますか?
日本人の健康好きは、テレビの番組表を見ていてもよくわかります。
でも、バラエティ番組で「新常識」などといって取り上げられる目新しいことばかりが健康法ではありません。
何事も基本が大事。
膨大な調査や研究によって証明された、基本的で当たり前なことを忘れてはいけません。
どうせなら、効果がはっきりしているものから取り組みませんか。
がんを予防する効果のある生活習慣について、科学的根拠(エビデンス)のあるものを一緒に見ていきましょう。
今回ご紹介するほとんどの情報は、国立がん研究センターのがん情報サービスという一般の方向けのサイトで確認できます。
科学的根拠に基づく正確な情報をわかりやすく解説してある、非常におすすめのサイトです。
「科学的根拠に基づくがん予防」(「国立がん研究センター がん情報サービス」へのリンク)
正確な情報をもっとたくさん知りたい方はぜひのぞいてみてください。
このページではこれらの正確な情報をもとに、さらに踏み込んだ解説をしていきます。
目次
がんを防ぐための新12か条
国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめ、公益財団法人がん研究振興財団が2011年に発表したものです。
「がんを防ぐための新12か条」(公益財団法人がん研究振興財団) ※PDFファイル
この「新」12か条の前には、1978年に発表された「旧」12か条がありました。
新12か条の一番の特徴は、「日本人のためにつくられた」ことです。
人種によってなりやすい「がん」の種類は違います。
国によって生活習慣や環境も当然違います。
旧12か条はWHOが世界共通で使えるように作成したもので、必ずしも日本人にベストマッチしているものではありませんでした。
そこで、日本人のための調査や研究などをベースにつくられたのが新12か条なのです。
- タバコは吸わない
- 他人のタバコの煙をできるだけ避ける
- お酒はほどほどに
- バランスの取れた食生活を
- 塩辛い食品は控えめに
- 野菜や果物は不足にならないように
- 適度に運動
- 適切な体重維持
- ウイルスや細菌の感染予防と治療
- 定期的ながん検診を
- 身体の異常に気が付いたら、すぐに受診を
- 正しい情報でがんを知ることから
12か条のうち9番目までが一次予防、つまり「がんができることを防ぐ」ための項目。
10番目のがん検診は二次予防、つまり「早期発見・早期治療」のための項目。
11番目の「異常を放置せずすぐに受診」も、それ以上の悪化を防いで早めに治療を受けるためには欠かせない重要な項目です。
12番目の「正しい情報でがんを知る」ことは、1~11の項目すべてを実践するために必要なことといえます。
誤った情報は、文字通り「命取り」となることがあるから怖いのです。
正しい情報にもとづいて正しい行動を選択できること。
がん予防に限らず、何より重要なことかもしれませんね。
今回は特に「生活習慣」に関わる1~8の項目について取り上げていきます。
医療の専門家ではない一般の方が「がん予防」のためにどうすればいいか。
今日からできる「がん予防」の生活習慣を身につけていきましょう。
タバコを避けて生活しよう
タバコは、あらゆるがんのリスクを高めます。
肺がんの原因になるというのは有名ですが、影響を受けるのは肺だけではありません。
がんの発生する場所別にみると、以下のがんの原因となることがわかっています。
肺がん、胃がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、喉頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん
ここであげたがんは、確実にタバコが原因で発生します。
これ以外にも、「おそらくタバコが原因だろう」と考えられるがんはたくさんあります。
がんを予防したいならタバコを避けるに越したことはありません。
「新12か条」の1番目と2番目に、「喫煙」と「受動喫煙」をわざわざ分けてありますよね。
これが何よりタバコの怖さを物語っています。
自分が直接吸わなくてもがんなど病気の原因になってしまうなんて、そんな恐ろしいものがほかにあるでしょうか。
がんで亡くなった日本人のうち、20~27%がタバコが原因と考えられています。
- タバコを吸わないこと。
- 他人のタバコの煙を吸わないこと。
さらに言えば、あなたが喫煙者なら
- 他人に自分のタバコの煙を吸わせないこと。
他人の健康を害するというのは恐ろしいことです。
発がん性のある毒ガスを他人に無理やり吸わせれば、タバコ以外なら殺人罪かもしれません。
最近やっと受動喫煙を防ぐ取り組みが政府・各自治体で活発化してきてはいますが、世界的に見れば日本はまだまだ遅れています。
まずは私たちひとりひとりが意識してタバコの煙を避けましょう。
喫煙者だってタバコが健康に悪いことなんて百も承知なんですよね、普通は。
わかっていて吸うのだけれど、いざ病気になると、ほとんどの人は後悔するわけです。
吸い始めないことが一番。
すでにタバコを吸っている人には、禁煙外来の受診をおすすめします。
がんばらずに、つらい思いをせずに、タバコをやめることは可能です。
やめたいけどやめられないという人に向けて、タバコの話もいずれ改めて記事にしていきますね。
禁酒はしなくてもいいけど、お酒の飲みすぎはやめよう
お酒を飲むことは、タバコと並んで悪い生活習慣の代表格とされることが多いですよね。
でも、タバコとは違って「禁酒」までしなくても「がん予防」の効果は期待できます。
お酒好きな人には朗報ですね。
部位別にみると以下のがんは飲酒によって発生することが確実です。
食道がん、大腸がん、肝臓がん
他にも、乳がんのリスクを高めるとも考えられています。
飲めば飲むほどリスクが上がりますので、やはり飲みすぎは避けた方がいいでしょう。
具体的には、毎日飲むなら日本酒換算で1合まで。
ビールなら大瓶1本程度が目安です。
お酒に弱い人、すぐに顔が赤くなるという人はさらに注意してください。
お酒の強い人と比べてアルコールによる発がんのリスクが高いことがわかっています。
お酒が弱いなら、無理に飲んではいけません。
無理やり他人に飲ませるなんて、もってのほか。
もちろん、肝臓の病気を予防するという観点からいえば、毎日の飲酒自体がよくありませんよね。
できれば休肝日を週1~2日つくりたいものです。
がん予防のための理想的な食事とは
「新12か条」の4~6番目は食事に関する項目。
食生活も、がんを含めた様々な病気を予防するために重要です。
「健康にいい食事」というのはテレビのバラエティ番組でよく取り上げられているテーマですね。
そう、食事が健康のために大事なことは多くの人が知っています。
「新12か条」で指摘されているのは、誰もが一度は聞いたことのある、当たり前で地味なこと。
聞いたこともないような斬新な○○フードに飛びつく前に、がん予防の食事に必要な知識を持っておいてくださいね。
- 塩分を控える
- 野菜・果物をしっかり食べる
- アツアツのまま飲み食いしない
この3つは、がん予防に効果があることがわかっています。
減塩で胃がんを予防
減塩で得られるメリットは高血圧の予防だけではありません。
塩辛やイクラなどの高塩分食をよくとる人では、そうでない人よりも胃がんのリスクが高まることがほぼ確実とされています。
高血圧予防とあわせて考えると、ほとんどの日本人は塩分のとりすぎです。
1日あたりの塩分量は男性なら8.0g未満、女性なら7.0g未満が目標。
ラーメンのスープを飲み干してしまえば、あっというまに目標値に届いてしまいます。
日本人の食生活を考えると、減塩しすぎるという心配はほぼしなくてよさそうです。
減塩みそや減塩しょうゆといった商品を活用して、余分な塩分はできるだけとらないようにしましょう。
イクラなどの高塩分食品は、1週間に1回程度の楽しみにしておくのがよさそうです。
野菜と果物は毎日食べよう
野菜や果物を食べない食生活を健康にいいとは言えません。
がん予防に関していえば、野菜と果物をあまり食べないとがんのリスクが高まることがわかっています。
たくさん食べれば食べるほどいいとまでは言えませんので、目標値を目安にして、適度に毎日食べるのがよさそうです。
がんだけでなく、生活習慣病を予防する効果もあります。
1日あたりの目標値は野菜を小鉢で5皿分(350g)、さらに果物を一皿(50g)程度。
ここでいう「野菜」には芋類が含まれないことに注意してください。
緑黄色野菜、葉物野菜などをバランスよく食べること。
毎日きちんと自炊できればいいですが、忙しいと難しいこともありますよね。
あくまで日々の積み重ねが大事なのですから、楽に続けられる方法を見つけてください。
最近はコンビニでも野菜を美味しくたくさん食べられる商品を買うことができます。
栄養バランスのしっかり考えられた宅配弁当などのサービスもあります。
食事をつくるのが大変だけど健康には気を付けたい、という人にはありがたい時代ですね。
アツアツのままで飲み食いしない
若い世代だとあまり見かけないように思いますが、時々「アツアツこそがごちそう」という人がいます。
でも、ちょっとまった。
熱すぎる食べ物・飲み物は食道がんの原因になることがわかっています。
人間の構造上、口の中ではやけどしそうなほど熱くても、一旦飲み込んでしまうと熱さは感じないものです。
まさに「のどもとすぎれば熱さを忘れる」のですが、熱くないからといってダメージがないわけではありません。
ゴックンと飲みこんだあと、胃にとどくまでの食べ物の通り道を食道といいます。
食道の内側、食べ物と接するところ(粘膜)が熱によってダメージを受けてしまうのです。
熱いものを飲み食いする習慣は、やめたほうがいいと言えます。
少し冷まして、口の中がやけどしないぐらいの温度にするといいでしょう。
できるだけ運動してがんのリスクを下げよう
運動といっても、スポーツでなくとも構いません。
どれほど動いているか、活動的な時間があるか、がポイント。
普段座っている時間が長い人なら、意識的に立つ時間を増やしたり、少し遠回りして歩く距離を増やしたりすることでもいいのです。
運動はがん以外の病気の予防にも非常に効果的、というのはそろそろ常識でしょうか。
がんに関していえば、大腸がん、そして閉経後の女性の乳がんと子宮体がんのリスクを下げることがほぼ確実とされています。
活動量の目標としては、少なくとも毎日合計60分(6000歩)程度は歩くこと。
さらに週1回は30~40分ほど運動(ジョギング、早歩きでのウォーキングなど)ができるとなおいいですね。
食事に比べると運動はハードルが高いという人が多いと思います。
いきなり本格的に運動しようとするとくじけてしまいやすいですから、日常生活に少しだけプラスしてこまめに動くのがおススメです。
もちろん、しっかり運動したい人はどんどん運動してくださいね。
まとまった時間がとれなくても、少し意識して「ちょこちょこ活動」を増やしていくことで、がんを含む様々な病気を予防する効果が期待できますよ。
横断歩道は小走りで渡るとか、通勤電車では腹筋に力を入れて立つとか、ちょっとした工夫を積み重ねていきましょう。
習慣になってしまえば、こっちのものです。
体重をちょうどいいレベルにキープする
肥満もがんを含めたさまざまな不調の原因となります。
肥満によって引き起こされるがんには下のようなものがあります。
大腸がん、乳がん(閉経後)、食道がん、子宮体がん、腎臓がん、膵臓がん
ただし、痩せれば痩せるほどいいわけではありません。
他の生活習慣病予防とあわせて考えると、太りすぎず痩せすぎずのちょうどいいレベルに体重をコントロールするのが一番いいという結論になります。
適正体重というのは身長との関係性から求めることができます。
BMIという数値を使うのが一般的ですね。
身長を考慮した数値であるBMIを目安にして体重をコントロールしていきましょう。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
身長165cm、体重60kgの人では60÷1.65÷1.65でBMIは22.0となります。
BMIが25以上で肥満とされます。
男性の場合BMIは21~27、女性の場合はBMI21~25ぐらいが目標です。
若い女性からすると、ちょっとぽっちゃりしているぐらいが健康にはいい、ということになるでしょうか。
ちなみに、BMIが18.5未満で「やせ」となります。
やせすぎはやせすぎで様々な不調の原因となるなど、決して健康ではありません。
何事もほどほどに、というさじ加減を大事にしたいものですね。
最後に
がんが発生する原因は様々。
予防法はひとつだけよりも、複数取り入れることでさらなる効果が期待できます。
今日からでも意識することで将来のがんリスクを下げていくことができるでしょう。
注意してほしいのは、がんの予防だけが生きる目標ではないということです。
がんは徹底的に予防したけれど他の病気で命を縮めた、なんていうことになっては意味がありません。
人生が楽しくなくなるほど節制した生活は続けることが難しいでしょう。
何事もバランス、さじ加減がポイント。
健康食品やサプリメントなどに、とればとるほど健康になるようなものはありません。
大抵のものには「適量」があります。
塩分だって摂りすぎはいけませんが、適量とることは食事の美味しさや楽しさにつながります。
タバコだけは徹底的に避ける価値があると考えていますが、この話はまた別の機会に。
まずはできるものから取り入れてみてくださいね。
今回はがんを防ぐための新12か条のうち、特に生活習慣に関係する1~8の項目だけに注目して解説しました。
9~12の項目もがん予防のためには非常に重要ですので、すぐにでも詳しく知りたい!という人はこちらのページを参考にしてみてください↓。
「がんを防ぐための新12か条」(公益財団法人がん研究振興財団)※PDFファイル
今回触れた内容について覚えておいてほしいポイントをまとめました。
- タバコは避ける
- お酒は適量にする
- 食事は減塩、野菜と果物、熱すぎない温度
- 少しでもいいから体を動かす
- 太りすぎ痩せすぎは×
- 何事もほどほどに!
がん検診については以前の記事で触れています。
もしよければ参考にしてみてください。