こんにちは。産業医のPOPです。
肥満が色々な病気の原因になることはご存知ですよね。
これまで多くの人に減量指導をしてきて、太りすぎが健康に良くないことを知らない人と出会ったことはありません。
痩せなきゃいけないと頭ではわかっているのに、なかなか痩せられないのが人間というもの。
ここでは日々のちょっとした積み重ねで少しずつ時間をかけて健康に近づいていくための減量方法についてお伝えます。
ご紹介するのは、どれも即効性こそないものの簡単に試しやすいものばかりですよ。
- 無理なく減量したい
- 減量のため何から取り組むべきか知りたい
- 長く続けられる健康的な生活習慣を身につけたい
- ダイエットのモチベーションを維持したい
※短期間で大幅に減量したい!とかすでに標準体型だけどもっとガリガリを目指したい!という人には向かない方法です。
目次
「○○だけで劇的に痩せる!」に騙されない
最初に言っておくと、飲むだけで痩せる、というものは存在しません。
巷で宣伝している様々なダイエット商品のほとんどは効果がないか、あってもわずかです。
広告を見ていると夢のような謳い文句でついつい手が伸びそうになりますが、騙されないでください。
そんな夢の商品があるならば、科学的に検証されて有名な医学雑誌に掲載され、世界中の話題になります。
医療機関で採用されて、肥満治療のスタンダードになっているはず。
そうすれば世界中で爆発的に売れて儲かるわけですし、もしかするとノーベル医学生理学賞ものかもしれません。
ただのダイエット商品である限り、あやしいと思って避けて通るのがお勧め。
怪しい商品にお金をつぎ込むぐらいなら、痩せた後の自分にお金をかけませんか。
行きたい場所への旅行でもいいし、あこがれブランドの服やバッグでもいいでしょう。
男性なら、痩せた後にオーダースーツを作るのもおすすめです。
すっきりした体にジャストフィットのスーツを着ている男性は、どんな年代であっても素敵なものです。
ダイエットに特効薬はありません。
まずはこれを正しく認識するところからが本当のダイエットです。
短期間だけ取り組んでリバウンドを繰り返すようなやりかたではなく、10年20年と続けることが苦痛でない方法を身につけましょう。
ダイエットの王道は食事療法。辛くない方法でいいんです
食事療法抜きにダイエットは語れませんよね。
過激な食事制限や置き換えダイエットなどは長続きしないのでリバウンドしがち。
ダイエット初心者にもやさしい、簡単な方法を集めました。
カロリー計算はしなくてOK
痩せたいと思うと、まず思い浮かぶのがカロリー計算という人もいるかもしれません。
が、ここではカロリー計算はお勧めしません。
ダイエット初心者がつまづく原因の一つが、カロリー計算を厳密にやろうとしすぎること。
詳細な計算は、ダイエット生活に慣れてきた中級者以上で取り入れる分にはいいのですが、最初から手を出すにはややハードルが高いです。
面倒くさいものは続きません。
食事のメニューや成分表示に記載があればちらっと見る、という程度でOKです。
細かい数字よりも大切なのは、食べ過ぎないこと。
具体的な例を見ながら『食べ過ぎない』とはどういうことか考えてみましょう。
1日の食事回数よりも間食に注目しよう
食事回数についてはよく質問されることですが、1日3食規則正しく食べるのが一番だとは考えています。
しかし、朝食べる習慣のない人が「朝食を食べる」ことからいきなりダイエットを始めようとすると、多くの場合スタート直後に体重が増加します。
そこでやる気を失ってしまって「ダイエットしようとしたせいで体重が増えた」状態で減量を諦める人が少なくありません。
生活リズムを変えるのは、ある程度効果が出てきてやる気が高まってからでも遅くはありません。
気持ちよくスタートを切るためにも、まずは「減らしていく」ことから考えると長続きしやすいです。
何を減らすのか。
『間食』と『カロリーのある飲み物』から減らすのがお勧め。
というより、間食もカロリーのある飲み物も好き放題飲み食いしている状態では痩せることがかなり難しいです。
間食していないという人もよくよく聞くと、ちょっとしたお菓子や果物やヨーグルトをちょこちょこ食べていることがあります。
口に入れるものは全てカウント。体によさそうだからノーカウント、はありません。
間食と飲み物から余計なカロリーをとることをやめて、少なくとも2週間は続けてみましょう。
これまで思っていた以上に飲み食いしていた人は、この時点で効果を感じられるでしょう。
間食なしだとお腹が空いてしまう!という場合は、食事の回数や食べ方を見直すタイミングです。
1日2食だった人は3食、3食の人は4~5食にするのもありです。
ただし、これまでの食事にプラスして食べていたら当然カロリーは増えるわけですから痩せられません。
たとえば夕食が遅くて夕方空腹になる人なら、夕食の時に食べる予定のものを先に一部食べてしまう、という方法があります。
お勧めしているのはごはんやパン、麺類といった『主食』を早めに食べてしまうこと。
これで夜寝る直前にたくさん食べすぎることを防ぐこともできます。
ちなみに、間食が好きでやめるのが辛い場合は『一切口にしない』とするよりは、『1週間に1日は好きなものを食べていい』というぐらいのゆるいルールにした方がいいでしょう。
もしも週1回の間食解禁でほかの6日分の努力が元にもどってしまうのであれば、解禁日に食べる量を減らすか、解禁日を10日に1日とか2週間に1日とかに減らしていきましょう。
ストイックに痩せたい人も、一度誘惑に負けて間食したぐらいではこれまでの努力は無駄になりませんから、翌日からまた頑張りましょうね。
主食は一度に一種類まで
定食屋さんなどで『麺類+ごはん』や『パン+麺類』といったセットメニューを良く見かけます。
これを毎日食べていたら太ります。
どちらか一方だけにしましょう。
女性向けのおしゃれなカフェでよくあるように、ごく少量しか盛られていないなら問題はありませんけどね。
原則として一度の食事ではごはんならごはん、麺なら麺、といった具合に主食の種類を1種類にしましょう。
ラーメンとチャーハンのセットなんかも美味しいのはわかりますが、確実に太るコンボです。
主食は1種類にして、物足りないならその分野菜やタンパク質でお腹を満たしましょう。
肉や魚を食べてごはんや麺は減らす、と覚えておいてください。
食べる順番を変える
これもかなり有名な方法なのですでに知っているかもしれませんが、実践できていますか?
一汁三菜のような食事の時に取り入れましょう。
小学校の給食で習ったような『三角食べ』よりも、『血糖値の上昇をゆるやかに』することができます。
野菜や汁物から食べ始めて、メインの肉や魚を食べて、ごはんなどの主食は最後。
懐石料理で出される順番がいいんですよね。
もしだんだんお腹が満たされてきたなら、最後の主食は完食せずに少な目にするとさらに効果的。
慣れてくると考えなくてもできるようになってきます。
私の周囲の医師は皆同じようにこの順番で食べるので、見ているとおもしろいです。
肉は食べていい。揚げ物は控えめに。
ダイエットというとなぜか「焼き肉に行けない」みたいなことを言う人がいますが、肉は食べていいんです。
むしろきちんと食べてください。
減量期間はどうしても体の水分や筋肉から減っていって、脂肪はなかなか減りません。
でも筋肉が減りすぎると、体重が落ちたとしても見た目がたるんでいたりして美しくありませんし、健康的とも言い難い。
筋肉がある程度減るのは避けられませんが、減り方を緩やかにするためには良質なタンパク質をしっかりとることが重要です。
タンパク質自体は米などにも含まれますが、やはり一番効率的なのは肉や魚といった『アミノ酸スコア』の高い食品での摂取。
もちろんよりダイエット効果を出そうと思ったらアブラの少ない調理法がいいです。
蒸したり、煮たりですね。
その次が焼いたり炒めたりで、揚げ物は最後。
なので、焼き肉やステーキはダイエット中でも食べていいんです。
毎日焼肉食べ放題でお腹がはちきれんばかりに食べまくる、みたいな生活でなく、常識的な食べ方をするぶんには問題ありません。
食事に関するポイントを確認してみましょう。
- まずは『食べ過ぎない』ことを意識する
- 間食とカロリーのある飲み物は避ける
- 主食は1食に1種類まで
- 食べる順番は血糖値の上がらない物から
- タンパク質はしっかり食べる
痩せたいならたっぷり寝よう
睡眠不足はダイエットの大敵です。
健康的な減量を考えた時に睡眠の重要性は見逃せません。
睡眠が足りないと太るように人間はできているのです。
『レプチン』というホルモンが減って満腹感を感じにくくなるため食欲が抑えにくく、食欲を増進させるホルモン『グレリン』が増えます。
さらに、睡眠不足は人間にとって強いストレスですから、ストレスホルモンとも言われる『コルチゾール』が過剰に増えます。
すると食欲が増え、体に脂肪をためこもうとする働きが強まるばかりか、血圧が上がってしまったりします。
肥満対策に限ったことではありませんが、睡眠は健康づくりの基盤です。
1日7~8時間を目安にたっぷりと眠りましょう。
運動できないのならNEAT(ニート)を増やそう
ニートといっても働かずに家にいるNEETではありません。
ここでいうNEATとはNon-Exercise Activities Thermogenesisの頭文字をとったもの。
「非運動性熱産生」と訳します。
つまり「運動ではない日常生活活動による消費エネルギー」という意味です。
私たちは通勤や通学、仕事や家事といった『日常生活』でもエネルギーを消費します。
人間が1日に消費するエネルギーの割合を示したグラフを下に示しました。
基礎代謝が一番多くを占めますが、次に多いのはNEATなんです。
「運動で痩せるのは難しい」と聞いたことがある人もいるかもしれませんが、運動によるエネルギー消費は実はそれほど多くないことがわかります。
都心の会社に電車で通勤していた人が、地方に転勤して車通勤になったとたん太ってしまうことがあるのには、このNEATが関係しています。
痩せるためには、時々ちょこっと運動することよりも、日々のNEATを高めることの方がずっと重要です。
もちろん、運動には減量以外にも様々なメリットがありますから、たとえ痩せなくても運動することはいいことです。
でももしあなたが「運動はしたくない」なら、こんな方法を試してみてはどうでしょう。
NEAT(ニート)を高める日常の工夫
ポイントは『立っている時間を増やす』ことです。
こたつに入って遠くのリモコンに座ったまま手を伸ばすのがNEATの低い人で、一歩の距離でも立ち上がって取りに行くのがNEATの高い人です。
イメージできますよね。
- 電車ではドアなどによりかからず自分の足で立つ
- 姿勢を良くして腹筋に力を入れる
- ゴミ箱にゴミを投げ入れず立ち上がって近づいてから入れる
- 1~2階の移動ならエレベーターを使わず階段を使う
- 大股で早足で歩く。小走りでもいい
- 片足立ちで歯磨きをする
- 椅子の背によりかからず背筋を伸ばす
- 子どもと遊ぶ
最近では『座りすぎ』そのものが健康に悪影響を与えているということがわかってきています。
参加者が全員立った状態での会議や、高さを変えられて座ったり立ったりできるデスクを導入している企業もあります。
立ってちょこちょこ消費するエネルギーはばかになりません。
ダイエットにはNEATが大事。覚えておきましょう。
まとめ
過酷な食事制限やハードな運動をしなくても、痩せることは十分可能です。
効果が出るまで時間はかかりますが、ここまで上げてきたポイントを気長に実践してください。
習慣化できればこちらのものです。
肥満とは無縁の生活を苦も無く送ることができるようになるでしょう。
- ダイエットに近道なし。王道を行こう
- 食事は大事だけど過激な食事制限をしなくとも痩せられる
- 睡眠を積極的にとる
- NEATを意識してこまめに立って動く